20.10. imaplib
— IMAP4 プロトコルクライアント¶
ソースコード: Lib/imaplib.py
このモジュールでは三つのクラス、 IMAP4
, IMAP4_SSL
と IMAP4_stream
を定義します。これらのクラスは IMAP4 サーバへの接続をカプセル化し、 RFC 2060 に定義されている IMAP4rev1 クライアントプロトコルの大規模なサブセットを実装しています。このクラスは IMAP4 (RFC 1730) 準拠のサーバと後方互換性がありますが、 STATUS
コマンドは IMAP4 ではサポートされていないので注意してください。
imaplib
モジュール内では三つのクラスを提供しており、 IMAP4
は基底クラスとなります:
-
class
imaplib.
IMAP4
([host[, port]])¶ このクラスは実際の IMAP4 プロトコルを実装しています。インスタンスが初期化された際に接続が生成され、プロトコルバージョン (IMAP4 または IMAP4rev1) が決定されます。host が指定されていない場合、
''
(ローカルホスト) が用いられます。port が省略された場合、標準の IMAP4 ポート番号 (143) が用いられます。
例外は IMAP4
クラスの属性として定義されています:
-
exception
IMAP4.
error
¶ 何らかのエラー発生の際に送出される例外です。例外の理由は文字列としてコンストラクタに渡されます。
-
exception
IMAP4.
abort
¶ IMAP4 サーバのエラーが生じると、この例外が送出されます。この例外は
IMAP4.error
のサブクラスです。通常、インスタンスを閉じ、新たなインスタンスを再び生成することで、この例外から復旧できます。
-
exception
IMAP4.
readonly
¶ この例外は書き込み可能なメールボックスの状態がサーバによって変更された際に送出されます。この例外は
IMAP4.error
のサブクラスです。他の何らかのクライアントが現在書き込み権限を獲得しており、メールボックスを開きなおして書き込み権限を再獲得する必要があります。
このモジュールではもう一つ、安全 (secure) な接続を使ったサブクラスがあります:
-
class
imaplib.
IMAP4_SSL
([host[, port[, keyfile[, certfile]]]])¶ IMAP4
から派生したサブクラスで、SSL 暗号化ソケットを介して接続を行います (このクラスを利用するためには SSL サポート付きでコンパイルされた socket モジュールが必要です) 。 host が指定されていない場合、''
(ローカルホスト) が用いられます。 port が省略された場合、標準の IMAP4-over-SSL ポート番号 (993) が用いられます。 keyfile および certfile もオプションです - これらは SSL 接続のための PEM 形式の秘密鍵 (private key) と認証チェイン (certificate chain) ファイルです。
さらにもう一つのサブクラスは、子プロセスで確立した接続を使用する場合に使用します:
-
class
imaplib.
IMAP4_stream
(command)¶ IMAP4
から派生したサブクラスで、 command をos.popen2()
に渡して作成されるstdin/stdout
デスクリプタと接続します。バージョン 2.3 で追加.
以下のユーティリティ関数が定義されています:
-
imaplib.
Internaldate2tuple
(datestr)¶ IMAP4 の
INTERNALDATE
文字列を解析してそれに相当するローカルタイムを返します。戻り値はtime.struct_time
のインスタンスか、文字列のフォーマットが不正な場合はNone
です。
-
imaplib.
Int2AP
(num)¶ 整数を [
A
..P
] からなる文字集合を用いて表現した文字列に変換します。
-
imaplib.
ParseFlags
(flagstr)¶ IMAP4
FLAGS
応答を個々のフラグからなるタプルに変換します。
-
imaplib.
Time2Internaldate
(date_time)¶ date_time を IMAP4 の
INTERNALDATE
表現形式に変換します。戻り値は"DD-Mmm-YYYY HH:MM:SS +HHMM"
(ダブルクォートを含む) の形をした文字列です。 date_time 引数は (time.time()
が返す) epoch からの経過秒数を表す数値 (int か float) か、(time.localtime()
が返す) ローカルタイムを表現する 9要素タプルか、ダブルクォートされた文字列です。文字列だった場合、それがすでに正しいフォーマットになっていると仮定されます。
IMAP4 メッセージ番号は、メールボックスに対する変更が行われた後には変化します; 特に、EXPUNGE
命令はメッセージの削除を行いますが、残ったメッセージには再度番号を振りなおします。従って、メッセージ番号ではなく、UID 命令を使い、その UID を利用するよう強く勧めます。
モジュールの末尾に、より拡張的な使用例が収められたテストセクションがあります。
参考
プロトコルに関する記述、およびプロトコルを実装したサーバのソースとバイナリは、全てワシントン大学の IMAP Information Center (https://www.washington.edu/imap/) にあります。
20.10.1. IMAP4 オブジェクト¶
全ての IMAP4rev1 命令は、同じ名前のメソッドで表されており、大文字のものも小文字のものもあります。
命令に対する引数は全て文字列に変換されます。例外は AUTHENTICATE
の引数と APPEND
の最後の引数で、これは IMAP4 リテラルとして渡されます。必要に応じて (IMAP4 プロトコルが感知対象としている文字が文字列に入っており、かつ丸括弧か二重引用符で囲われていなかった場合) 文字列はクオートされます。しかし、LOGIN
命令の password 引数は常にクオートされます。文字列がクオートされないようにしたい (例えば STORE
命令の flags 引数) 場合、文字列を丸括弧で囲んでください (例: r'(\Deleted)'
)。
各命令はタプル: (type, [data, ...])
を返し、type は通常 'OK'
または 'NO'
です。data は命令に対する応答をテキストにしたものか、命令に対する実行結果です。各 data は文字列かタプルとなります。タプルの場合、最初の要素はレスポンスのヘッダで、次の要素にはデータが格納されます (ie: 'literal' value)。
以下のコマンドにおける message_set オプションは、操作の対象となるひとつあるいは複数のメッセージを指す文字列です。単一のメッセージ番号 ('1'
) かメッセージ番号の範囲 ('2:4'
)、あるいは連続していないメッセージをカンマでつなげたもの ('1:3,6:9'
) となります。範囲指定でアスタリスクを使用すると、上限を無限とすることができます ('3:*'
)。
IMAP4
のインスタンスは以下のメソッドを持っています:
-
IMAP4.
append
(mailbox, flags, date_time, message)¶ 指定された名前のメールボックスに message を追加します。
-
IMAP4.
authenticate
(mechanism, authobject)¶ 認証命令です — 応答の処理が必要です。
mechanism は利用する認証メカニズムを与えます。認証メカニズムはインスタンス変数
capabilities
の中にAUTH=mechanism
という形式で現れる必要があります。authobject は呼び出し可能なオブジェクトである必要があります:
data = authobject(response)
これはサーバで継続応答を処理するためによばれます。これは(おそらく)暗号化されて、サーバへ送られた
data
を返します。もしクライアントが中断応答*
を送信した場合にはこれはNone
を返します。
-
IMAP4.
check
()¶ サーバ上のメールボックスにチェックポイントを設定します。
-
IMAP4.
close
()¶ 現在選択されているメールボックスを閉じます。削除されたメッセージは書き込み可能メールボックスから除去されます。
LOGOUT
前に実行することを勧めます。
-
IMAP4.
copy
(message_set, new_mailbox)¶ message_set で指定したメッセージ群を new_mailbox の末尾にコピーします。
-
IMAP4.
create
(mailbox)¶ mailbox と名づけられた新たなメールボックスを生成します。
-
IMAP4.
delete
(mailbox)¶ mailbox と名づけられた古いメールボックスを削除します。
-
IMAP4.
deleteacl
(mailbox, who)¶ mailbox における who についてのACLを削除(権限を削除)します。
バージョン 2.4 で追加.
-
IMAP4.
expunge
()¶ 選択されたメールボックスから削除された要素を永久に除去します。各々の削除されたメッセージに対して、
EXPUNGE
応答を生成します。返されるデータにはEXPUNGE
メッセージ番号を受信した順番に並べたリストが入っています。
-
IMAP4.
fetch
(message_set, message_parts)¶ メッセージ (の一部) を取りよせます。message_parts はメッセージパートの名前を表す文字列を丸括弧で囲ったもので、例えば:
"(UID BODY[TEXT])"
のようになります。返されるデータはメッセージパートのエンベロープ情報とデータからなるタプルです。
-
IMAP4.
getacl
(mailbox)¶ mailbox に対する
ACL
を取得します。このメソッドは非標準ですが、Cyrus
サーバでサポートされています。
-
IMAP4.
getannotation
(mailbox, entry, attribute)¶ mailbox に対する
ANNOTATION
を取得します。このメソッドは非標準ですが、Cyrus
サーバでサポートされています。バージョン 2.5 で追加.
-
IMAP4.
getquota
(root)¶ quota
root により、リソース使用状況と制限値を取得します。このメソッドは RFC 2087 で定義されている IMAP4 QUOTA 拡張の一部です。バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
getquotaroot
(mailbox)¶ mailbox に対して
quota
root を実行した結果のリストを取得します。このメソッドは RFC 2087 で定義されている IMAP4 QUOTA 拡張の一部です。バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
list
([directory[, pattern]])¶ pattern にマッチする directory メールボックス名を列挙します。directory の標準の設定値は最上レベルのメールフォルダで、pattern は標準の設定では全てにマッチします。返されるデータには
LIST
応答のリストが入っています。
-
IMAP4.
login
(user, password)¶ 平文パスワードを使ってクライアントを照合します。password はクオートされます。
-
IMAP4.
login_cram_md5
(user, password)¶ パスワードの保護のため、クライアント認証時に
CRAM-MD5
だけを使用します。これは、CAPABILITY
レスポンスにAUTH=CRAM-MD5
が含まれる場合のみ有効です。バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
logout
()¶ サーバへの接続を遮断します。サーバからの
BYE
応答を返します。
-
IMAP4.
lsub
([directory[, pattern]])¶ 購読しているメールボックス名のうち、ディレクトリ内でパターンにマッチするものを列挙します。directory の標準の設定値は最上レベルのメールフォルダで、pattern は標準の設定では全てにマッチします。返されるデータには返されるデータはメッセージパートエンベロープ情報とデータからなるタプルです。
-
IMAP4.
myrights
(mailbox)¶ mailboxにおける自分のACLを返します (すなわち自分がmailboxで持っている権限を返します)。
バージョン 2.4 で追加.
-
IMAP4.
namespace
()¶ RFC2342で定義されるIMAP名前空間を返します。
バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
noop
()¶ サーバに
NOOP
を送信します。
-
IMAP4.
open
(host, port)¶ host 上の port に対するソケットを開きます。このメソッドは
IMAP4
のコンストラクタから暗黙的に呼び出されます。このメソッドで確立された接続オブジェクトはIMAP4.read()
,IMAP4.readline()
,IMAP4.send()
,IMAP4.shutdown()
メソッドで使われます。このメソッドはオーバライドすることができます。
-
IMAP4.
partial
(message_num, message_part, start, length)¶ メッセージの後略された部分を取り寄せます。返されるデータはメッセージパートエンベロープ情報とデータからなるタプルです。
-
IMAP4.
proxyauth
(user)¶ user として認証されたものとします。認証された管理者がユーザの代理としてメールボックスにアクセスする際に使用します。
バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
read
(size)¶ 遠隔のサーバから size バイト読み出します。このメソッドはオーバライドすることができます。
-
IMAP4.
readline
()¶ 遠隔のサーバから一行読み出します。このメソッドはオーバライドすることができます。
-
IMAP4.
recent
()¶ サーバに更新を促します。新たなメッセージがない場合応答は
None
になり、そうでない場合RECENT
応答の値になります。
-
IMAP4.
rename
(oldmailbox, newmailbox)¶ oldmailbox という名前のメールボックスを newmailbox に名称変更します。
-
IMAP4.
response
(code)¶ 応答 code を受信していれば、そのデータを返し、そうでなければ
None
を返します。通常の形式 (usual type) ではなく指定したコードを返します。
-
IMAP4.
search
(charset, criterion[, ...])¶ 条件に合致するメッセージをメールボックスから検索します。charset は
None
でもよく、この場合にはサーバへの要求内にCHARSET
は指定されません。IMAP プロトコルは少なくとも一つの条件 (criterion) が指定されるよう要求しています; サーバがエラーを返した場合、例外が送出されます。例:
# M is a connected IMAP4 instance... typ, msgnums = M.search(None, 'FROM', '"LDJ"') # or: typ, msgnums = M.search(None, '(FROM "LDJ")')
-
IMAP4.
select
([mailbox[, readonly]])¶ メールボックスを選択します。返されるデータは mailbox 内のメッセージ数 (
EXISTS
応答) です。標準の設定では mailbox は'INBOX'
です。readonly が設定された場合、メールボックスに対する変更はできません。
-
IMAP4.
send
(data)¶ 遠隔のサーバに
data
を送信します。このメソッドはオーバライドすることができます。
-
IMAP4.
setacl
(mailbox, who, what)¶ ACL
を mailbox に設定します。このメソッドは非標準ですが、Cyrus
サーバでサポートされています。
-
IMAP4.
setannotation
(mailbox, entry, attribute[, ...])¶ ANNOTATION
を mailbox に設定します。このメソッドは非標準ですが、Cyrus
サーバでサポートされています。バージョン 2.5 で追加.
-
IMAP4.
setquota
(root, limits)¶ quota
root のリソースを limits に設定します。このメソッドは RFC 2087 で定義されている IMAP4 QUOTA 拡張の一部です。バージョン 2.3 で追加.
-
IMAP4.
shutdown
()¶ open
で確立された接続を閉じます。IMAP4.logout()
は暗黙的にこのメソッドを呼び出します。このメソッドはオーバライドすることができます。
-
IMAP4.
socket
()¶ サーバへの接続に使われているソケットインスタンスを返します。
-
IMAP4.
sort
(sort_criteria, charset, search_criterion[, ...])¶ sort
命令はsearch
に結果の並べ替え (sort) 機能をつけた変種です。返されるデータには、条件に合致するメッセージ番号をスペースで分割したリストが入っています。sort 命令は search_criterion の前に二つの引数を持ちます; sort_criteria のリストを丸括弧で囲ったものと、検索時の charset です。
search
と違って、検索時の charset は必須です。uid sort
命令もあり、search
に対するuid search
と同じようにsort
命令に対応します。sort
命令はまず、charset 引数の指定に従って searching criteria の文字列を解釈し、メールボックスから与えられた検索条件に合致するメッセージを探します。次に、合致したメッセージの数を返します。IMAP4rev1
拡張命令です。
-
IMAP4.
status
(mailbox, names)¶ mailbox の指定ステータス名の状態情報を要求します。
-
IMAP4.
store
(message_set, command, flag_list)¶ メールボックス内のメッセージ群のフラグ設定を変更します。 command は RFC 2060 のセクション 6.4.6 で指定されているもので、 "FLAGS", "+FLAGS", あるいは "-FLAGS" のいずれかとなります。オプションで末尾に ".SILENT" がつくこともあります。
たとえば、すべてのメッセージに削除フラグを設定するには次のようにします:
typ, data = M.search(None, 'ALL') for num in data[0].split(): M.store(num, '+FLAGS', '\\Deleted') M.expunge()
-
IMAP4.
subscribe
(mailbox)¶ 新たなメールボックスを購読 (subscribe) します。
-
IMAP4.
thread
(threading_algorithm, charset, search_criterion[, ...])¶ thread
コマンドはsearch
にスレッドの概念を加えた変形版です。返されるデータは空白で区切られたスレッドメンバのリストを含んでいます。各スレッドメンバは0以上のメッセージ番号からなり、空白で区切られており、親子関係を示しています。
thread
コマンドは search_criterion 引数の前に2つの引数を持っています。threading_algorithm と charset です。search
コマンドとは違い、charset は必須です。search
に対するuid search
と同様に、thread
にもuid thread
があります。thread
コマンドはまずメールボックス中のメッセージを、charsetを用いた検索条件で検索します。その後マッチしたメッセージを指定されたスレッドアルゴリズムでスレッド化して返します.IMAP4rev1
拡張命令です。バージョン 2.4 で追加.
-
IMAP4.
uid
(command, arg[, ...])¶ command args を、メッセージ番号ではなく UID で指定されたメッセージ群に対して実行します。命令内容に応じた応答を返します。少なくとも一つの引数を与えなくてはなりません; 何も与えない場合、サーバはエラーを返し、例外が送出されます。
-
IMAP4.
unsubscribe
(mailbox)¶ 古いメールボックスの購読を解除 (unsubscribe) します。
-
IMAP4.
xatom
(name[, arg[, ...]])¶ サーバから
CAPABILITY
応答で通知された単純な拡張命令を許容 (allow) します。
IMAP4_SSL
のインスタンスは追加のメソッドを一つだけ持ちます:
-
IMAP4_SSL.
ssl
()¶ サーバへの安全な接続に使われる SSLObject インスタンスを返します。
以下の属性が IMAP4
のインスタンス上で定義されています:
-
IMAP4.
PROTOCOL_VERSION
¶ サーバから返された
CAPABILITY
応答にある、サポートされている最新のプロトコルです。
-
IMAP4.
debug
¶ デバッグ出力を制御するための整数値です。初期値はモジュール変数
Debug
から取られます。3 以上の値にすると各命令をトレースします。
20.10.2. IMAP4 の使用例¶
以下にメールボックスを開き、全てのメッセージを取得して印刷する最小の (エラーチェックをしない) 使用例を示します:
import getpass, imaplib
M = imaplib.IMAP4()
M.login(getpass.getuser(), getpass.getpass())
M.select()
typ, data = M.search(None, 'ALL')
for num in data[0].split():
typ, data = M.fetch(num, '(RFC822)')
print 'Message %s\n%s\n' % (num, data[0][1])
M.close()
M.logout()