24.2. cmd — 行指向のコマンドインタープリタのサポート

ソースコード: Lib/cmd.py


Cmd クラスでは、行指向のコマンドインタープリタを書くための簡単なフレームワークを提供します。テストハーネスや管理ツール、そして、後により洗練されたインターフェイスでラップするプロトタイプとして、こうしたインタープリタはよく役に立ちます。

class cmd.Cmd(completekey='tab', stdin=None, stdout=None)

Cmd インスタンス、あるいはサブクラスのインスタンスは、行指向のインタープリタ・フレームワークです。 Cmd 自身をインスタンス化することはありません。むしろ、 Cmd のメソッドを継承したり、アクションメソッドをカプセル化するために、あなたが自分で定義するインタープリタクラスのスーパークラスとしての便利です。

オプション引数 completekey は、補完キーの readline 名です。デフォルトは Tab です。 completekeyNone でなく、 readline が利用できるならば、コマンド補完は自動的に行われます。

オプション引数 stdinstdout には、Cmd またはそのサブクラスのインスタンスが入出力に使用するファイルオブジェクトを指定します。省略時には sys.stdinsys.stdout が使用されます。

引数に渡した stdin を使いたい場合は、インスタンスの use_rawinput 属性を False にセットしてください。そうしないと stdin は無視されます。

24.2.1. Cmdオブジェクト

Cmd インスタンスは、次のメソッドを持ちます:

Cmd.cmdloop(intro=None)

プロンプトを繰り返し出力し、入力を受け取り、受け取った入力から取り去った先頭の語を解析し、その行の残りを引数としてアクションメソッドへディスパッチします。

オプションの引数は、最初のプロンプトの前に表示されるバナーあるいはイントロ用の文字列です (これはクラス属性 intro をオーバーライドします)。

readline モジュールがロードされているなら、入力は自動的に bash のような履歴リスト編集機能を受け継ぎます(例えば、 Control-P は直前のコマンドへのスクロールバック、 Control-N は次のものへ進む、 Control-F はカーソルを右へ非破壊的に進める、 Control-B はカーソルを非破壊的に左へ移動させる等)。

入力のファイル終端は、文字列 'EOF' として渡されます。

メソッド do_foo() を持っている場合に限って、インタープリタのインスタンスはコマンド名 foo を認識します。特別な場合として、文字 '?' で始まる行はメソッド do_help() へディスパッチします。他の特別な場合として、文字 '!' で始まる行はメソッド do_shell() へディスパッチします(このようなメソッドが定義されている場合)。

このメソッドは postcmd() メソッドが真を返したときに return します。 postcmd() に対する stop 引数は、このコマンドが対応する do_*() メソッドからの返り値です。

補完が有効になっているなら、コマンドの補完が自動的に行われます。また、コマンド引数の補完は、引数 text, line, begidx, および endidx と共に complete_foo() を呼び出すことによって行われます。 text は、マッチしようとしている文字列の先頭の語です。返されるマッチは全てそれで始まっていなければなりません。 line は始めの空白を除いた現在の入力行です。 begidxendidx は先頭のテキストの始まりと終わりのインデックスで、引数の位置に依存した異なる補完を提供するのに使えます。

Cmd のすべてのサブクラスは、定義済みの do_help() を継承します。このメソッドは、(引数 'bar' と共に呼ばれたとすると)対応するメソッド help_bar() を呼び出します。そのメソッドが存在しない場合、 do_bar() の docstring があればそれを表示します。引数がなければ、 do_help() は、すべての利用可能なヘルプ見出し(すなわち、対応する help_*() メソッドを持つすべてのコマンドまたは docstring を持つコマンド)をリストアップします。また、文書化されていないコマンドでも、すべてリストアップします。

Cmd.onecmd(str)

プロンプトに答えてタイプしたかのように引数を解釈実行します。これをオーバーライドすることがあるかもしれませんが、通常は必要ないでしょう。便利な実行フックについては、 precmd()postcmd() メソッドを参照してください。戻り値は、インタープリタによるコマンドの解釈実行をやめるかどうかを示すフラグです。コマンド str に対応する do_*() メソッドがある場合、そのメソッドの返り値が返されます。そうでない場合は default() メソッドからの返り値が返されます。

Cmd.emptyline()

プロンプトに空行が入力されたときに呼び出されるメソッド。このメソッドがオーバーライドされていないなら、最後に入力された空行でないコマンドが繰り返されます。

Cmd.default(line)

コマンドの先頭の語が認識されないときに、入力行に対して呼び出されます。このメソッドがオーバーライドされていないなら、エラーメッセージを表示して戻ります。

Cmd.completedefault(text, line, begidx, endidx)

利用可能なコマンド固有の complete_*() が存在しないときに、入力行を補完するために呼び出されるメソッド。デフォルトでは、空行を返します。

Cmd.precmd(line)

コマンド行 line が解釈実行される直前、しかし入力プロンプトが作られ表示された後に実行されるフックメソッド。このメソッドは Cmd 内のスタブであって、サブクラスでオーバーライドされるために存在します。戻り値は onecmd() メソッドが実行するコマンドとして使われます。 precmd() の実装では、コマンドを書き換えるかもしれないし、あるいは単に変更していない line を返すかもしれません。

Cmd.postcmd(stop, line)

コマンドディスパッチが終わった直後に実行されるフックメソッド。このメソッドは Cmd 内のスタブで、サブクラスでオーバーライドされるために存在します。 line は実行されたコマンド行で、 stoppostcmd() の呼び出しの後に実行を停止するかどうかを示すフラグです。これは onecmd() メソッドの戻り値です。このメソッドの戻り値は、 stop に対応する内部フラグの新しい値として使われます。偽を返すと、実行を続けます。

Cmd.preloop()

cmdloop() が呼び出されたときに一度だけ実行されるフックメソッド。このメソッドは Cmd 内のスタブであって、サブクラスでオーバーライドされるために存在します。

Cmd.postloop()

cmdloop() が戻る直前に一度だけ実行されるフックメソッド。このメソッドは Cmd 内のスタブであって、サブクラスでオーバーライドされるために存在します。

Cmd のサブクラスのインスタンスは、公開されたインスタンス変数をいくつか持っています:

Cmd.prompt

入力を求めるために表示されるプロンプト。

Cmd.identchars

コマンドの先頭の語として受け入れられる文字の文字列。

Cmd.lastcmd

最後の空でないコマンド接頭辞。

Cmd.cmdqueue

キューに入れられた入力行のリスト。cmdqueue リストは新たな入力が必要な際に cmdloop() 内でチェックされます; これが空でない場合、その要素は、あたかもプロンプトから入力されたかのように順に処理されます。

Cmd.intro

イントロあるいはバナーとして表示される文字列。 cmdloop() メソッドに引数を与えるために、オーバーライドされるかもしれません。

Cmd.doc_header

ヘルプ出力に文書化されたコマンドのセクションがある場合に表示するヘッダ。

Cmd.misc_header

ヘルプの出力にその他のヘルプ見出しがある(すなわち、 do_*() メソッドに対応していない help_*() メソッドが存在する)場合に表示するヘッダ。

Cmd.undoc_header

ヘルプ出力に文書化されていないコマンドのセクションがある(すなわち、対応する help_*() メソッドを持たない do_*() メソッドが存在する)場合に表示するヘッダ。

Cmd.ruler

ヘルプメッセージのヘッダの下に、区切り行を表示するために使われる文字。空のときは、ルーラ行が表示されません。デフォルトでは、'=' です。

Cmd.use_rawinput

フラグで、デフォルトでは真です。真ならば、 cmdloop() はプロンプトを表示して次のコマンド読み込むために input() を使います。偽ならば、 sys.stdout.write()sys.stdin.readline() が使われます。 (これが意味するのは、 readline を import することによって、それをサポートするシステム上では、インタープリタが自動的に Emacs 形式の行編集とコマンド履歴のキーストロークをサポートするということです。)

24.2.2. Cmd の例

The cmd module is mainly useful for building custom shells that let a user work with a program interactively.

This section presents a simple example of how to build a shell around a few of the commands in the turtle module.

Basic turtle commands such as forward() are added to a Cmd subclass with method named do_forward(). The argument is converted to a number and dispatched to the turtle module. The docstring is used in the help utility provided by the shell.

The example also includes a basic record and playback facility implemented with the precmd() method which is responsible for converting the input to lowercase and writing the commands to a file. The do_playback() method reads the file and adds the recorded commands to the cmdqueue for immediate playback:

import cmd, sys
from turtle import *

class TurtleShell(cmd.Cmd):
    intro = 'Welcome to the turtle shell.   Type help or ? to list commands.\n'
    prompt = '(turtle) '
    file = None

    # ----- basic turtle commands -----
    def do_forward(self, arg):
        'Move the turtle forward by the specified distance:  FORWARD 10'
        forward(*parse(arg))
    def do_right(self, arg):
        'Turn turtle right by given number of degrees:  RIGHT 20'
        right(*parse(arg))
    def do_left(self, arg):
        'Turn turtle left by given number of degrees:  LEFT 90'
        left(*parse(arg))
    def do_goto(self, arg):
        'Move turtle to an absolute position with changing orientation.  GOTO 100 200'
        goto(*parse(arg))
    def do_home(self, arg):
        'Return turtle to the home position:  HOME'
        home()
    def do_circle(self, arg):
        'Draw circle with given radius an options extent and steps:  CIRCLE 50'
        circle(*parse(arg))
    def do_position(self, arg):
        'Print the current turle position:  POSITION'
        print('Current position is %d %d\n' % position())
    def do_heading(self, arg):
        'Print the current turle heading in degrees:  HEADING'
        print('Current heading is %d\n' % (heading(),))
    def do_color(self, arg):
        'Set the color:  COLOR BLUE'
        color(arg.lower())
    def do_undo(self, arg):
        'Undo (repeatedly) the last turtle action(s):  UNDO'
    def do_reset(self, arg):
        'Clear the screen and return turtle to center:  RESET'
        reset()
    def do_bye(self, arg):
        'Stop recording, close the turtle window, and exit:  BYE'
        print('Thank you for using Turtle')
        self.close()
        bye()
        return True

    # ----- record and playback -----
    def do_record(self, arg):
        'Save future commands to filename:  RECORD rose.cmd'
        self.file = open(arg, 'w')
    def do_playback(self, arg):
        'Playback commands from a file:  PLAYBACK rose.cmd'
        self.close()
        with open(arg) as f:
            self.cmdqueue.extend(f.read().splitlines())
    def precmd(self, line):
        line = line.lower()
        if self.file and 'playback' not in line:
            print(line, file=self.file)
        return line
    def close(self):
        if self.file:
            self.file.close()
            self.file = None

def parse(arg):
    'Convert a series of zero or more numbers to an argument tuple'
    return tuple(map(int, arg.split()))

if __name__ == '__main__':
    TurtleShell().cmdloop()

Here is a sample session with the turtle shell showing the help functions, using blank lines to repeat commands, and the simple record and playback facility:

Welcome to the turtle shell.   Type help or ? to list commands.

(turtle) ?

Documented commands (type help <topic>):
========================================
bye     color    goto     home  playback  record  right
circle  forward  heading  left  position  reset   undo

(turtle) help forward
Move the turtle forward by the specified distance:  FORWARD 10
(turtle) record spiral.cmd
(turtle) position
Current position is 0 0

(turtle) heading
Current heading is 0

(turtle) reset
(turtle) circle 20
(turtle) right 30
(turtle) circle 40
(turtle) right 30
(turtle) circle 60
(turtle) right 30
(turtle) circle 80
(turtle) right 30
(turtle) circle 100
(turtle) right 30
(turtle) circle 120
(turtle) right 30
(turtle) circle 120
(turtle) heading
Current heading is 180

(turtle) forward 100
(turtle)
(turtle) right 90
(turtle) forward 100
(turtle)
(turtle) right 90
(turtle) forward 400
(turtle) right 90
(turtle) forward 500
(turtle) right 90
(turtle) forward 400
(turtle) right 90
(turtle) forward 300
(turtle) playback spiral.cmd
Current position is 0 0

Current heading is 0

Current heading is 180

(turtle) bye
Thank you for using Turtle