8.6. array — 効率のよい数値アレイ

このモジュールでは、基本的な値 (文字、整数、浮動小数点数) のアレイ (array、配列) をコンパクトに表現できるオブジェクト型を定義しています。アレイはシーケンス (sequence) 型であり、中に入れるオブジェクトの型に制限があることを除けば、リストとまったく同じように振る舞います。オブジェクト生成時に一文字の 型コード を用いて型を指定します。次の型コードが定義されています:

型コード C の型 Python の型 最小サイズ (バイト単位)
'c' char 文字(str型) 1
'b' signed char int 1
'B' unsigned char int 1
'u' Py_UNICODE Unicode文字(unicode型) 2 (ノートを参照)
'h' signed short int 2
'H' unsigned short int 2
'i' signed int int 2
'I' unsigned int long 2
'l' signed long int 4
'L' unsigned long long 4
'f' float float 4
'd' double float 8

注釈

'u' 型コードは Python の Unicode 文字列に対応します。一文字幅の文字は 2 バイトで二文字幅の文字は 4 バイトです。

値の実際の表現はマシンアーキテクチャ (厳密に言うとCの実装) によって決まります。値の実際のサイズは itemsize 属性から得られます。 Python の通常の整数型では C の unsigned (long) 整数の最大範囲を表せないため、 'L''I' で表現されている要素に入る値は Python では長整数として表されます。

このモジュールでは次の型を定義しています:

class array.array(typecode[, initializer])

要素のデータ型が typecode に限定される新しいアレイで、オプションの値 initializer を渡すと初期値になりますが、リスト、文字列または適当な型のイテレーション可能オブジェクトでなければなりません。

バージョン 2.4 で変更: 以前はリストか文字列しか受け付けませんでした。

リストか文字列を渡した場合、新たに作成されたアレイの fromlist()fromstring() あるいは fromunicode() メソッド (以下を参照して下さい)に渡され、初期値としてアレイに追加されます。それ以外の場合には、イテレーション可能オブジェクト initializer は新たに作成されたオブジェクトの extend() メソッドに渡されます。

array.ArrayType

array の別名です。撤廃されました。

アレイオブジェクトでは、インデクス指定、スライス、連結および反復といった、通常のシーケンスの演算をサポートしています。スライス代入を使うときは、代入値は同じ型コードのアレイオブジェクトでなければなりません。それ以外のオブジェクトを指定すると TypeError を送出します。アレイオブジェクトはバッファインタフェースを実装しており、バッファオブジェクトをサポートしている場所ならどこでも利用できます。

次のデータ要素やメソッドもサポートされています:

array.typecode

アレイを作るときに使う型コード文字です。

array.itemsize

アレイの要素 1 つの内部表現に使われるバイト長です。

array.append(x)

x の新たな要素をアレイの末尾に追加します。

array.buffer_info()

アレイの内容を記憶するために使っているバッファの、現在のメモリアドレスと要素数の入ったタプル (address, length) を返します。バイト単位で表したメモリバッファの大きさは array.buffer_info()[1] * array.itemsize で計算できます。例えば ioctl() 操作のような、メモリアドレスを必要とする低レベルな (そして、本質的に危険な) I/Oインタフェースを使って作業する場合に、ときどき便利です。アレイ自体が存在し、長さを変えるような演算を適用しない限り、有効な値を返します。

注釈

C やC++ で書いたコードからアレイオブジェクトを使う場合 (buffer_info() の情報を使う意味のある唯一の方法です) は、アレイオブジェクトでサポートしているバッファインタフェースを使う方がより理にかなっています。このメソッドは後方互換性のために保守されており、新しいコードでの使用は避けるべきです。バッファインタフェースの説明は buffer オブジェクトと memoryview オブジェクト にあります。

array.byteswap()

アレイのすべての要素に対して「バイトスワップ」 (リトルエンディアンとビッグエンディアンの変換) を行います。このメソッドは大きさが 1、2、4 および 8 バイトの値にのみをサポートしています。他の型の値に使うと RuntimeError を送出します。異なるバイトオーダをもつ計算機で書かれたファイルからデータを読み込むときに役に立ちます。

array.count(x)

シーケンス中の x の出現回数を返します。

array.extend(iterable)

iterable から要素を取り出し、アレイの末尾に要素を追加します。 iterable が別のアレイ型である場合、二つのアレイは 全く 同じ型コードでなければなりません。それ以外の場合には TypeError を送出します。 iterable がアレイでない場合、アレイに値を追加できるような正しい型の要素からなるイテレーション可能オブジェクトでなければなりません。

バージョン 2.4 で変更: 以前は他のアレイ型しか引数に指定できませんでした。

array.fromfile(f, n)

ファイルオブジェクト f から (マシン依存のデータ形式そのままで) n 個の要素を読み出し、アレイの末尾に要素を追加します。 n 個の要素を読めなかったときは EOFError を送出しますが、それまでに読み出せた値はアレイに追加されています。 f は本当の組み込みファイルオブジェクトでなければなりません。 read() メソッドをもつ他の型では動作しません。

array.fromlist(list)

リストから要素を追加します。型に関するエラーが発生した場合にアレイが変更されないことを除き、 for x in list: a.append(x) と同じです。

array.fromstring(s)

文字列から要素を追加します。文字列は、 (ファイルから fromfile() メソッドを使って値を読み込んだときのように) マシン依存のデータ形式で表された値の配列として解釈されます。

array.fromunicode(s)

指定した Unicode 文字列のデータを使ってアレイを拡張します。アレイの型コードは 'u' でなければなりません。それ以外の場合には、 ValueError を送出します。他の型のアレイに Unicode 型のデータを追加するには、 array.fromstring(unicodestring.encode(enc)) を使ってください。

array.index(x)

アレイ中で x が出現するインデクスのうち最小の値 i を返します。

array.insert(i, x)

アレイ中の位置 i の前に値 x をもつ新しい要素を挿入します。 i の値が負の場合、アレイの末尾からの相対位置として扱います。

array.pop([i])

アレイからインデクスが i の要素を取り除いて返します。オプションの引数はデフォルトで -1 になっていて、最後の要素を取り除いて返すようになっています。

array.read(f, n)

バージョン 1.5.1 で撤廃: fromfile() メソッドを使ってください。

ファイルオブジェクト f から (マシン依存のデータ形式そのままで) n 個の要素を読み出し、アレイの末尾に要素を追加します。 n 個の要素を読めなかったときは EOFError を送出しますが、それまでに読み出せた値はアレイに追加されています。 f は本当の組み込みファイルオブジェクトでなければなりません。 read() メソッドをもつ他の型では動作しません。

array.remove(x)

アレイ中の x のうち、最初に現れたものを取り除きます。

array.reverse()

アレイの要素の順番を逆にします。

array.tofile(f)

アレイのすべての要素をファイルオブジェクト f に (マシン依存のデータ形式そのままで) 書き込みます。

array.tolist()

アレイを同じ要素を持つ普通のリストに変換します。

array.tostring()

アレイをマシン依存のデータアレイに変換し、文字列表現 (tofile() メソッドによってファイルに書き込まれるものと同じバイト列) を返します。

array.tounicode()

アレイを Unicode 文字列に変換します。アレイの型コードは 'u' でなければなりません。それ以外の場合には ValueError を送出します。他の型のアレイから Unicode 文字列を得るには、 array.tostring().decode(enc) を使ってください。

array.write(f)

バージョン 1.5.1 で撤廃: tofile() メソッドを使ってください。

アレイのすべての要素をファイルオブジェクト f に (マシン依存のデータ形式そのままで) 書き込みます。

アレイオブジェクトを表示したり文字列に変換したりすると、 array(typecode, initializer) という形式で表現されます。アレイが空の場合は initializer の表示を省略します。アレイが空でなければ、 typecode'c' の場合には文字列に、それ以外の場合には数値のリストになります。 array クラスが from array import array というふうにインポートされている限り、変換後の文字列に eval() を用いると元のアレイオブジェクトと同じデータ型と値を持つアレイに逆変換できることが保証されています。文字列表現の例を以下に示します:

array('l')
array('c', 'hello world')
array('u', u'hello \u2641')
array('l', [1, 2, 3, 4, 5])
array('d', [1.0, 2.0, 3.14])

参考

struct モジュール
異なる種類のバイナリデータのパックおよびアンパック。
xdrlib モジュール
遠隔手続き呼び出しシステムで使われる外部データ表現仕様 (External Data Representation, XDR) のデータのパックおよびアンパック。
Numerical Python ドキュメント
Numeric Python 拡張モジュール (NumPy) では、別の方法でシーケンス型を定義しています。 Numerical Python に関する詳しい情報は http://www.numpy.org/ を参照してください。