拡張と埋め込み FAQ¶
目次
- 拡張と埋め込み FAQ
- C で独自の関数を作ることはできますか?
- C++ で独自の関数を作ることはできますか?
- C を書くのは大変です。他の方法はありませんか?
- C から任意の Python 文を実行するにはどうしますか?
- C から任意の Python 式を評価するにはどうしますか?
- Python オブジェクトから C の値を取り出すにはどうしますか?
- Py_BuildValue() で任意長のタプルを作るにはどうしますか?
- C からオブジェクトのメソッドを呼び出すにはどうしますか?
- PyErr_Print() (その他 stdout/stderr に印字するもの) からの出力を受け取るにはどうしますか?
- C から Python で書かれたモジュールにアクセスするにはどうしますか?
- Python から C++ へインタフェースするにはどうしますか?
- セットアップファイルでモジュールを追加しようとしたらメイクに失敗しました。なぜですか?
- 拡張をデバッグするにはどうしますか?
- Linux システムで Python モジュールをコンパイルしたいのですが、見つからないファイルがあります。なぜですか?
- "SystemError: _PyImport_FixupExtension: module yourmodule not loaded" とはどういう意味ですか?
- "不完全 (incomplete) な入力" を "不適切 (invalid) な入力" から区別するにはどうしますか?
- 未定義の g++ シンボル __builtin_new や __pure_virtual を見つけるにはどうしますか?
- メソッドのいくつかは C で、その他は Python で実装されたオブジェクトクラスを (継承などで) 作ることはできますか?
- モジュール X をインポートした時に "undefined symbol: PyUnicodeUCS2*" と言われるのはなぜですか?
C で独自の関数を作ることはできますか?¶
はい。関数、変数、例外、そして新しいタイプまで含んだビルトインモジュールを C で作れます。これはドキュメント Python インタプリタの拡張と埋め込み で説明されています。
ほとんどの中級から上級の Python 本もこの話題を扱っています。
C++ で独自の関数を作ることはできますか?¶
はい。C++ 内にある C 互換機能を使ってできます。 extern "C" { ... }
で Python のインクルードファイルを囲み、 extern "C"
を Python インタプリタから呼ぶ各関数の前に置いてください。グローバルや静的な C++ オブジェクトの構造体を持つものは良くないでしょう。
C を書くのは大変です。他の方法はありませんか?¶
独自の C 拡張を書くための別のやり方は、目的によっていくつかあります。
速度が必要なら、 Psyco は Python バイトコードから x86 アセンブリコードを生成します。 Psyco でコードの最も時間制約が厳しい関数群をコンパイルすれば、 x-86 互換のプロセッサ上で動かす限り、わずかな手間で著しい改善ができます。
Cython とその親戚 Pyrex は、わずかに修正された Python を受け取り、対応する C コードを生成します。 Pyrex を使えば Python の C API を習得することなしに拡張を書けます。
今のところ Python 拡張が存在しないような C や C++ ライブラリへのインターフェイスが必要な場合、SWIG のようなツールで、そのライブラリのデータ型のラッピングを図れます。 SIP、CXX、Boost、Weave でも C++ ライブラリをラッピングできます。
C から任意の Python 文を実行するにはどうしますか?¶
これを行う最高水準の関数は PyRun_SimpleString()
で、一つの文字列引数を取り、モジュール __main__
のコンテキストでそれを実行し、成功なら 0、例外 (SyntaxError
を含む) が発生したら -1 を返します。更に制御したければ、 PyRun_String()
を使ってください。ソースは Python/pythonrun.c
の 'PyRun_SimpleString()
を参照してください。
C から任意の Python 式を評価するにはどうしますか?¶
先の質問の PyRun_String()
を、スタートシンボル Py_eval_input
を渡して呼び出してください。これは式を解析し、評価してその値を返します。
Python オブジェクトから C の値を取り出すにはどうしますか?¶
オブジェクトの型に依ります。タプルなら、 PyTuple_Size()
が長さを返し、 PyTuple_GetItem()
が指定されたインデックスの要素を返します。リストにも同様の関数 PyList_Size()
と PyList_GetItem()
があります。
文字列なら、 PyString_Size()
が長さを、 PyString_AsString()
がその値へのポインタを返します。なお、Python の文字列には null バイトが含まれている可能性があるので、C の strlen()
は使うべきではありません。
オブジェクトの型を検査するには、まず最初にそれが NULL でないことを確かめた上で、 PyString_Check()
、 PyTuple_Check()
、 PyList_Check()
などを使います。
Python オブジェクトへの高レベルな API には、いわゆる 'abstract' インタフェースが提供するものもあります。機能の詳細は Include/abstract.h
を読んでください。これで、 PySequence_Length()
や PySequence_GetItem()
などの呼び出しであらゆるタイプの Python シーケンスのインタフェースができますし、その他多くの役立つプロトコルもできます。
Py_BuildValue() で任意長のタプルを作るにはどうしますか?¶
できません。代わりに t = PyTuple_New(n)
を使い、 PyTuple_SetItem(t, i, o)
でオブジェクトを埋めてください – なお、これは o
のリファレンスカウントを "食う" ので、 Py_INCREF()
しなければなりません。リストにも同様の関数 PyList_New(n)
と PyList_SetItem(l, i, o)
があります。なお、タプルは Python コードに渡される前に 必ず すべての値が設定されていなければなリません – PyTuple_New(n)
は各要素を初期化して NULL にしますが、これは Python の適切な値ではありません。
C からオブジェクトのメソッドを呼び出すにはどうしますか?¶
PyObject_CallMethod()
関数でオブジェクトの任意のメソッドを呼び出せます。パラメタは、オブジェクト、呼び出すメソッドの名前、 Py_BuildValue()
で使われるようなフォーマット文字列、そして引数です:
PyObject *
PyObject_CallMethod(PyObject *object, char *method_name,
char *arg_format, ...);
これはメソッドを持ついかなるオブジェクトにも有効で、組み込みかユーザ定義かは関係ありません。返り値に対して Py_DECREF()
する必要があることもあります。
例えば、あるファイルオブジェクトの "seek" メソッドを 10, 0 を引数として呼ぶとき (ファイルオブジェクトのポインタを "f" とします):
res = PyObject_CallMethod(f, "seek", "(ii)", 10, 0);
if (res == NULL) {
... an exception occurred ...
}
else {
Py_DECREF(res);
}
なお、 PyObject_CallObject()
の引数リストには 常に タプルが必要です。関数を引数なしで呼び出すには、フォーマットに "()" を渡し、関数を一つの引数で呼び出すには、関数を括弧でくくって例えば "(i)" としてください。
PyErr_Print() (その他 stdout/stderr に印字するもの) からの出力を受け取るにはどうしますか?¶
Python コード内で、 write()
メソッドをサポートするオブジェクトを定義してください。そのオブジェクトを sys.stdout
と sys.stderr
に代入してください。print_error を呼び出すか、単に標準のトレースバック機構を作動させてください。そうすれば、出力は write()
が送る任意の所に行きます。
最も簡単な方法は、標準ライブラリの StringIO クラスを使うことです。
サンプルコードと出力の受け取り例:
>>> class StdoutCatcher:
... def __init__(self):
... self.data = ''
... def write(self, stuff):
... self.data = self.data + stuff
...
>>> import sys
>>> sys.stdout = StdoutCatcher()
>>> print 'foo'
>>> print 'hello world!'
>>> sys.stderr.write(sys.stdout.data)
foo
hello world!
C から Python で書かれたモジュールにアクセスするにはどうしますか?¶
以下のようにモジュールオブジェクトへのポインタを得られます:
module = PyImport_ImportModule("<modulename>");
そのモジュールがまだインポートされていない (つまり、まだ sys.modules
に現れていない) なら、これはモジュールを初期化します。そうでなければ、単純に sys.modules["<modulename>"]
の値を返します。なお、これはモジュールをいかなる名前空間にも代入しません。これはモジュールが初期化されて 'sys.modules
に保管されていることを保証するだけです。
これで、モジュールの属性 (つまり、モジュールで定義された任意の名前) に以下のようにアクセスできるようになります:
attr = PyObject_GetAttrString(module, "<attrname>");
PyObject_SetAttrString()
を呼んでモジュールの変数に代入することもできます。
Python から C++ へインタフェースするにはどうしますか?¶
やりたいことに応じて、いろいろな方法があります。手動でやるなら、 "拡張と埋め込み" ドキュメント を読むことから始めてください。なお、Python ランタイムシステムにとっては、 C と C++ はあまり変わりません。だから、C 構造体 (ポインタ)型に基づいて新しい Python の型を構築する方針は C++ オブジェクトに対しても有効です。
C++ ライブラリに関しては、 C を書くのは大変です。他の方法はありませんか? を参照してください。
セットアップファイルでモジュールを追加しようとしたらメイクに失敗しました。なぜですか?¶
セットアップは改行で終わらなければならなくて、改行がないと、ビルド工程は失敗します。(これを直すには、ある種の醜いシェルスクリプトハックが必要ですが、このバグは小さいものですから努力に見合う価値はないでしょう。)
拡張をデバッグするにはどうしますか?¶
動的にロードされた拡張に GDB を使うとき、拡張がロードされるまでブレークポイントを設定してはいけません。
.gdbinit
ファイルに(または対話的に)、このコマンドを加えてください:
br _PyImport_LoadDynamicModule
そして、GDB を起動するときに:
$ gdb /local/bin/python
gdb) run myscript.py
gdb) continue # repeat until your extension is loaded
gdb) finish # so that your extension is loaded
gdb) br myfunction.c:50
gdb) continue
Linux システムで Python モジュールをコンパイルしたいのですが、見つからないファイルがあります。なぜですか?¶
Python の多くのパッケージバージョンには、Python 拡張をコンパイルするのに必要な様々なファイルを含む /usr/lib/python2.x/config/
ディレクトリが含まれていません。
Red Hat では、Python RPM をインストールして必要なファイルを得てください。
Debian では、 apt-get install python-dev
を実行してください。
"SystemError: _PyImport_FixupExtension: module yourmodule not loaded" とはどういう意味ですか?¶
これは、"yourmodule" という名前の拡張モジュールが生成されたけれど、モジュールの init 関数がその名前で初期化しないという意味です。
全てのモジュールの init 関数には次のような行があるでしょう:
module = Py_InitModule("yourmodule", yourmodule_functions);
この関数に渡された文字列が拡張モジュールと同じ名前でない場合、 SystemError
例外が発生します。
"不完全 (incomplete) な入力" を "不適切 (invalid) な入力" から区別するにはどうしますか?¶
Python インタラクティブインタプリタでは、入力が不完全なとき (例えば、 "if" 文の始まりをタイプした時や、カッコや三重文字列引用符を閉じていない時など) には継続プロンプトを与えられますが、入力が不適切であるときには即座に構文エラーメッセージが与えられます。このようなふるまいを模倣したいことがあります。
Python では構文解析器のふるまいに十分に近い codeop
モジュールが使えます。例えば IDLE がこれを使っています。
これを C で行う最も簡単な方法は、 PyRun_InteractiveLoop()
を (必要ならば別のスレッドで) 呼び出し、Python インタプリタにあなたの入力を扱わせることです。独自の入力関数を指定するのに PyOS_ReadlineFunctionPointer()
を設定することもできます。詳しいヒントは、 Modules/readline.c
や Parser/myreadline.c
を参照してください。
しかし、組み込みの Python インタプリタを他のアプリケーションと同じスレッドで実行することが必要で、 PyRun_InteractiveLoop()
でユーザの入力を待っている間止められないこともあります。このような場合の解決策の一つは、 PyParser_ParseString()
を呼んで e.error
と E_EOF
が等しいこと、つまり入力が不完全であることを確かめることです。これは、Alex Farber のコードを参考にした、コード片の例です:
#include <Python.h>
#include <node.h>
#include <errcode.h>
#include <grammar.h>
#include <parsetok.h>
#include <compile.h>
int testcomplete(char *code)
/* code should end in \n */
/* return -1 for error, 0 for incomplete, 1 for complete */
{
node *n;
perrdetail e;
n = PyParser_ParseString(code, &_PyParser_Grammar,
Py_file_input, &e);
if (n == NULL) {
if (e.error == E_EOF)
return 0;
return -1;
}
PyNode_Free(n);
return 1;
}
別の解決策は、受け取られた文字列を Py_CompileString()
でコンパイルすることを試みることです。エラー無くコンパイルされたら、返されたコードオブジェクトを PyEval_EvalCode()
を呼んで実行することを試みてください。そうでなければ、入力を後のために保存してください。コンパイルが失敗したなら、それがエラーなのか入力の続きが求められているだけなのか調べてください。そのためには、例外タプルからメッセージ文字列を展開し、それを文字列 "unexpected EOF while parsing" と比較します。ここに GNU readline library を使った完全な例があります (readline() を読んでいる間は SIGINT を無視したいかもしれません):
#include <stdio.h>
#include <readline.h>
#include <Python.h>
#include <object.h>
#include <compile.h>
#include <eval.h>
int main (int argc, char* argv[])
{
int i, j, done = 0; /* lengths of line, code */
char ps1[] = ">>> ";
char ps2[] = "... ";
char *prompt = ps1;
char *msg, *line, *code = NULL;
PyObject *src, *glb, *loc;
PyObject *exc, *val, *trb, *obj, *dum;
Py_Initialize ();
loc = PyDict_New ();
glb = PyDict_New ();
PyDict_SetItemString (glb, "__builtins__", PyEval_GetBuiltins ());
while (!done)
{
line = readline (prompt);
if (NULL == line) /* Ctrl-D pressed */
{
done = 1;
}
else
{
i = strlen (line);
if (i > 0)
add_history (line); /* save non-empty lines */
if (NULL == code) /* nothing in code yet */
j = 0;
else
j = strlen (code);
code = realloc (code, i + j + 2);
if (NULL == code) /* out of memory */
exit (1);
if (0 == j) /* code was empty, so */
code[0] = '\0'; /* keep strncat happy */
strncat (code, line, i); /* append line to code */
code[i + j] = '\n'; /* append '\n' to code */
code[i + j + 1] = '\0';
src = Py_CompileString (code, "<stdin>", Py_single_input);
if (NULL != src) /* compiled just fine - */
{
if (ps1 == prompt || /* ">>> " or */
'\n' == code[i + j - 1]) /* "... " and double '\n' */
{ /* so execute it */
dum = PyEval_EvalCode ((PyCodeObject *)src, glb, loc);
Py_XDECREF (dum);
Py_XDECREF (src);
free (code);
code = NULL;
if (PyErr_Occurred ())
PyErr_Print ();
prompt = ps1;
}
} /* syntax error or E_EOF? */
else if (PyErr_ExceptionMatches (PyExc_SyntaxError))
{
PyErr_Fetch (&exc, &val, &trb); /* clears exception! */
if (PyArg_ParseTuple (val, "sO", &msg, &obj) &&
!strcmp (msg, "unexpected EOF while parsing")) /* E_EOF */
{
Py_XDECREF (exc);
Py_XDECREF (val);
Py_XDECREF (trb);
prompt = ps2;
}
else /* some other syntax error */
{
PyErr_Restore (exc, val, trb);
PyErr_Print ();
free (code);
code = NULL;
prompt = ps1;
}
}
else /* some non-syntax error */
{
PyErr_Print ();
free (code);
code = NULL;
prompt = ps1;
}
free (line);
}
}
Py_XDECREF(glb);
Py_XDECREF(loc);
Py_Finalize();
exit(0);
}
未定義の g++ シンボル __builtin_new や __pure_virtual を見つけるにはどうしますか?¶
g++ モジュールを動的にロードするには、Python を再コンパイルし、それを g++ で再リンク (Python Modules Makefile 内の LINKCC を変更) し、拡張を g++ でリンク (例えば g++ -shared -o mymodule.so mymodule.o
) しなければなりません。
メソッドのいくつかは C で、その他は Python で実装されたオブジェクトクラスを (継承などで) 作ることはできますか?¶
はい、 int
、 list
、 dict
などのビルトインクラスから継承できます。
The Boost Python Library (BPL, http://www.boost.org/libs/python/doc/index.html) を使えば、これを C++ からできます。 (すなわち、BPL を使って C++ で書かれた拡張クラスを継承できます).
モジュール X をインポートした時に "undefined symbol: PyUnicodeUCS2*" と言われるのはなぜですか?¶
あなたは Unicode 文字に 4 バイト表現を使う Python のバージョンを使っていますが、インポートされた C 拡張モジュールに Unicode 文字に (デフォルトの) 2 バイト表現を使う Python でコンパイルされたものがあります。
未定義のシンボルの名前が PyUnicodeUCS4
で始まるのなら、逆の問題です: Python は 2 バイト Unicode 文字でビルトされていて、拡張モジュールは 4 バイト Unicode 文字の Python でコンパイルされています。
これはあらかじめビルドされた拡張パッケージを使っているときに起こりやすいです。とりわけ、RedHat Linux 7.x は 4 バイトユニコードでコンパイルされた "python2" バイナリを提供しました。これは拡張が PyUnicode_*()
関数のどれかを使っているとリンクの失敗を起こすだけです。拡張が Unicode に関連する Py_BuildValue()
(等)へのフォーマット指定や PyArg_ParseTuple()
へのパラメタ指定を何かしら含んでいても問題になります。
Python インタプリタが使っている Unicode 文字のサイズは、 sys.maxunicode の値を調べることで確かめられます:
>>> import sys
>>> if sys.maxunicode > 65535:
... print 'UCS4 build'
... else:
... print 'UCS2 build'
この問題を解決する唯一の方法は、Unicode 文字に同じサイズを使ってビルドされた Python バイナリでコンパイルされた拡張モジュールを使うことです。